top of page
ポートレート(東京都江戸川区)
濡そぼる公園に誰が遊びに来るのかと思ったが、それでもところどころに傘を手に歩く人を見つけるのは都会だからだろうか。 ちょうど河津桜が満開になっていて、管理事務所のおじさんにもそこで撮ったらどうかと勧められていたが、プロのジャズプレイヤーである二人の女性は無機質なコンクリート...
ハーフバースデーの写真(東京都千代田区)
お濠沿いの遊歩道の桜はまだ蕾もさだかに見えない。 「咲いてたらいいんですけどね」とパパは言うが、咲いたら咲いたで狭い道は人で溢れるだろうから、昼間は撮影どころではなくなる。 あちらが立てばこちらが立たず。 ハーフバースデーの赤ちゃんには四歳のお姉ちゃんがいる。...
はじめての一人旅(東京都内)
小学生でもスマホを持っていることが珍しくない昨今、一人で知らない場所へ行くというのはそれほどハードルが高くないのではないか。 そう思ったりしたけど、実際はやはりそうでもないらしい。 小学四年生の男の子は旅の途中で一回も笑顔を見せることがなかった。...
ニューボーンの写真(静岡県裾野市)
その家にニューボーンフォトで呼ばれて行ったのは2年前。 たぶんもう来ることもないだろうなと思っていたらまた呼ばれた。二人目の赤ちゃんが生まれたのだ。 呼ばれなければ行かなかった場所が日本のあちこちにあるのは幸せなことだ。 赤ちゃんだけを撮るのはさほど問題ではない。...
子どもと家族の写真(静岡県伊豆市)
雨上がりの修善寺はひんやりするものの、風がないのが幸いである。 修禅寺の手水からは湯気が上がっていて、手を差し出した人たちは一様に「あったかい!」と声を上げる。温泉場ならではである。 東京から家族旅行に来た四人家族は仲がいい。...
百日祝いの写真(埼玉県狭山市)
テーブルの上に僕が作った結婚式のアルバムが置かれている。 二人の結婚式を撮ったのはじつに10年前のことである。 そのときの新郎新婦の写真を思い出して目の前の二人に重ねる。 歳を取るってのは幸せなことだな、 昨年赤ちゃんが生まれて夫婦二人だけの暮らしは一変する。...
お宮参りの写真(東京都世田谷区)
神社の拝殿の脇に梅の木が一本あって、子どもの上着のボタンほどの紅い梅の花がささやかに咲き始めている。 陽射しはないが、風もなく穏やかな日曜日の神社にはお宮参りの家族が次々にやってくる。 二ヶ月の双子の赤ちゃんを抱っこした家族は約束の時間きっかりに来てくれた。...
ニューボーンの写真(山口県山陽小野田市)
昨年末にできたばかりという真新しいお家は、リビングの隣に土間のような空間があり、その間を障子で仕切るという和風をアレンジした間取りでなかなかおしゃれだ。 生まれて七日目の赤ちゃんは男の子。二歳になるお兄ちゃんがいる。 男子二人だと動き回って障子に穴を開けたりしそうで大丈夫か...
ハーフバースデーの写真(沖縄県石垣市)
「成人式6年前です」もうすぐ六ヶ月になる赤ちゃんを抱っこした彼女は言う。 https://miharayuu-monophoto.blogspot.com/2018/01/1544.html すっかり母親の顔になっている。...
誕生日の写真(沖縄県石垣市)
家族が住む小さな集落は住人同士の結びつきが強く、タンカー(誕生日)と聞けば親戚や知り合いがお祝いを持ってやってくる。 御歳90というおばあさんが島言葉でお祈りしてから、選び取りに一升餅というイベントが始まる。 二女ちゃんとは10歳違いの三女ちゃんのタンカーは久しぶりの赤ちゃ...
成人記念の写真(岡山市北区)
着物姿の若い女性たちが次々に家族をともなって後楽園入口の木戸をくぐってゆく。 園内で写真を撮るのだろう。浮き立つような空気が伝わる。 よく晴れて風もない。成人式には申し分のない天気である。 彼女は母親と一緒に現れた。 浅葱色の振袖にピンクの牡丹が描かれて華やかだ。...
成人記念の写真(広島県福山市)
慣れない紺色のスーツを着た二十歳の若者は、母親がスマホのレンズを向けても澄ました顔をして笑わない。 気恥ずかしいし、どういう表情を見せるべきかもわからない。 もう二十歳、まだ二十歳。 大人の仲間入りしたとはいえ、なんとなく宙ぶらりんな歳なのかもしれない。...
ニューボーンの写真(広島県福山市)
生後18日目の赤ちゃんはといえばぐっずり寝ていたのを起こして、ぐずりそうになったところでミルクを飲ませたら、目を開く。 そのまま泣かずに起きていてくれたのは幸運だった。 パパが赤ちゃんを膝に乗せてげっぷを出すために背中をトントンしながら「かわいいなあおまえは」とつぶやく。...
七五三の写真(福井県敦賀市)
丸い帽子をかぶったようなマッシュルームカットの五歳の男の子はスニーカーを履いている。 着物の襟元に蝶ネクタイがデザインされていて、明治時代っぽいから靴でもいいかなあと思うけれども、草履を履きますかと尋ねたら、「本人が嫌がるからこれでいいです」とママは言う。 ...
お宮参りの写真(福岡市博多区)
雨上がりの福岡は蒸し暑い。 お宮参りを済ませて拝殿の前に並んで記念写真を撮ると、ママはもう家に帰りたそうになっている。 待って待って、まだ撮っていないカットがあるんです。 お願いしてもう少しだけ撮らせてもらう。僕の都合というより赤ちゃんのため。どうしたって二人目の子どもは写...
入園・入学の写真(尾道フォトスタジオ)
家に帰って急いでスタジオを掃除して家族を待っていると、ほどなくして大汗をかきながらやってくる。 とりあえず冷たい水でも飲んで落ち着いてほしいところだが、撮影が始まるとテンパり気味になってどうにも撮りづらい。六歳の女の子のほうがよほど落ち着いている。...
お宮参りの写真(兵庫県南あわじ市)
集落の中ほどにある小さな神社が氏神様。 近隣から宮司さんが来てくれて祝詞を上げる。 板張りの拝殿に座って、前に見えるのは小さなお社の中の鏡。見えない神様に向かって頭を下げる。 お宮参りの赤ちゃんにはひとつ歳上のお姉ちゃんがいる。...
前撮りの写真(広島県尾道市)
9月も半ばだというのに、ほとんど真夏の暑さと変わらない。 陽にさらされた砂浜で、白いドレス姿の新婦の額に浮かんだ汗をメイクさんが押さえる。 それでも若い二人は元気だ。新郎さんには跳んだり跳ねたりしてもらって前撮りを楽しむ。 晴れた瀬戸内の海は青く穏やかで、まるで沖縄のようだ。
誕生日の写真(岡山県倉敷市)
トミカやプラレールというのは男の子なら避けて通れぬものであり、つくづく息の長いおもちゃなのだと実感する。 五歳の誕生日を迎えた男の子には、祖父母からのプレゼントとしてそれらが届いている。 箱から取り出すと、もう写真を撮るどころでない。夢中になって組み立て、遊ぶ。...
お宮参りと七五三の写真(福井県坂井市)
「おお、そんな丸い目で見て」二人目の孫を抱っこしたおじいちゃんは顔をほころばせる。 孫はかわいい。赤ちゃんならなおさらである。純真無垢な黒い瞳で見つめられたら無条件に笑顔になる。 二人目も男の子なので、数年もすれば元気に動き回ることになるだろうが、今は彼の腕の中でおとなしい...
前撮りの写真(広島県尾道市)
爽やかな初秋の陽射しの下で撮影できる二人は幸運である。 海岸に向かう車の中で「わたし雨女なんです」と言っていた彼女はよく笑う人だった。 撮影最初のカットで、僕が指示した場所に立ちながら「どんな表情すればいいですか」と聞いてくる。僕はそれに生返事をしながら、カメラを構えると、...
「青旅」鹿島臨海鉄道で夏の海へ
スマホの小さな画面は15歳の少女をいとも容易く吸い込んでしまう。 電車に乗って移動する時間の9割以上、彼女はほとんどスマホを見て過ごす。 窓から外を見るように促しても、ちょっと顔を上げて風景を見やるとすぐにまた視線は手にするスマホに落ちてしまう。...
「青旅」京急線で湘南の海へ
青い海を前にして十五歳の少女は迷っていた。靴を脱いで海に入るか否か。 「海に来るのはこれが最後だよ」と一緒についてきた父親が彼女に言う。 その言葉に背を押されたのか、靴を脱ぐと水に足を浸す。夏の湘南の海は温かい。彼女は水の中の貝殻を探して拾う。...
「青旅」伊賀鉄道で夏の川べりへ
「あっつーい!」少女は頭の上で両手で重ねて叫ぶ。 彼女のつややかな黒髪は落ちてくる真夏の陽射しを吸い込んで熱そうだ。 冗談でじゃあ茶髪にするかと言ったら、「チャパツってなあに?」と聞き返される。 純粋無垢という言葉が頭に浮かぶ。そうか君はまだ大人の階段昇るシンデレラ。...
bottom of page